群馬大学理工学府 物質・環境類 化学システム工学プログラム
中川研究室
(1)触媒の意義(2)よい触媒とは(3)触媒反応の機構(4)触媒反応の分類(5)均一系触媒(6)不均一系触媒:金属触媒(7)他の不均一系触媒(8)担持触媒の調製法(9)触媒の使い方

中川教授の触媒学講座 (3):触媒反応の機構と触媒サイクル

触媒は反応式には現れません。 すなわち、反応開始時と反応終了時では同じ状態です(※ただし、反応開始直後に触媒が活性化されて状態が変化し、以後反応終了時とは同じ状態であることもある)。 ですが、反応途中もずっと同じ状態ではありません。 触媒は反応物を配位して活性化したり、触媒自身が酸化還元を起こしたりしながら反応を進行させます。 これら各段階を素反応と呼びます。 触媒は何度も繰り返し使われるので、必ず元の状態に戻ってきます。 そのため、触媒反応の機構は元の触媒に戻す素反応を含み、サイクルとして描くことができます(触媒サイクル)。 反応中の触媒は、各段階での触媒状態が各素反応の速度に応じた割合で混在しています。 最も遅い素反応を律速段階 (rate-determining step; RDSと略記することも) と呼び、触媒のほとんどは律速段階の手前の状態で存在しています。

ワッカー反応の機構
下の大きい円がPd触媒に着目した触媒サイクル、上の小さい円がCu触媒に着目した触媒サイクル。
各矢印が素反応に対応し、矢印前後で原子と電荷はつりあっている。
Source: Dr. Roland Mattern, CC BY-SA 3.0, 元ファイル

触媒の役目は、触媒がない場合には存在しない反応ルート(触媒サイクル)を持ち込むことで、反応を加速させます。 化学反応の速度モデルとして、反応分子のエネルギーが峠を超える大きさである場合にのみ進行する、と考えるモデルがよく用いられ、 峠の高さとして活性化エネルギーEaというパラメーターを用い、反応速度をA exp(-Ea/RT) としてよく表すことができます。 触媒はEaが小さい反応ルートを新たに開通させることで反応を加速させます。 触媒は、「峠を超える道を広くするのではなく、トンネルを掘って新たな道をつくる」役割です。 触媒は無触媒反応を抑制することは基本的にできません。 特に、反応温度が極端に高くなると、Eaが大きい無触媒反応がとても速くなってきて、触媒を使うメリットは小さくなってしまいます。

(1)触媒の意義(2)よい触媒とは(3)触媒反応の機構(4)触媒反応の分類(5)均一系触媒(6)不均一系触媒:金属触媒(7)他の不均一系触媒(8)担持触媒の調製法(9)触媒の使い方